相続対象になる財産は、不動産や預貯金など資産として価値ある「プラスの財産」だけではありません。ローンや借金などの「マイナスの財産」についても、相続人に引き継がれる事となります。相続をしたことによって、相続人が多額の負債を抱える事態にもなりかねません。そういった事態をさけるためにも、相続を決める前の負債調査は慎重に行う必要があります。
相続対象となる負債
下記に負債の主な例をご紹介します。
- クレジットカードローン
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- 消費者金融からの借入れ
- 個人間の借金
- 未払いの携帯料金や水道光熱費
- 連帯保証債務
- 未納付の税金 など
ただし、住宅ローンはローン契約時に団体信用生命保険は加入している場合があります。そういったケースでは契約者の死亡により生命保険金の割り当てがされて、ローンが弁済されます。金融機関における手続きは必要となりますので、被相続人名義の住宅ローンが残っている場合には団体信用生命保険への加入有無を必ず確認しましょう。
クレジットカードローンや消費者金融の借り入れについて
信用情報機関を調べることによって、クレジットカードローンや消費者金融からの借り入れの確認を行う事ができます。相続人であれば、登録保管されている個人のクレジット利用履歴やローンの信用情報調査を行う事ができます。
信用機関は大きく分けて「3種類」あります。
JICC(日本信用情報機関)
信販会社や消費者金融で登録のあった信用情報を保管しています。相続人は窓口もしくは郵便での請求により、亡くなった方の信用情報を調査する事が可能です。
CIC(シー・アイ・シー)
一部信販会社やクレジットカード会社で登録のあった信用情報を保管しています。相続人は窓口もしくは郵便での請求だけでなく、インターネットから開示請求を行うことも可能です。
KSC(全国銀行個人信用情報センター)
銀行系のカード会社や銀行で登録された信用情報を保管しています。相続人は郵送での請求、またはインターネットからの開示請求を行うことができます。
各信用情報機関あてに信用情報を調査する際には、手数料を納める必要があります。機関によって手数料の支払い方法は異なり、郵便小為替や開示利用券での入金が指定されているケースもあります。事前に各信用情報機関へ確認しておくとよいでしょう。
なお、相続対象となる負債には、未払い・未納付の料金・税金や個人間の借金なども挙げられます。これらは、信用情報機関では調査することはできません。自宅に保管されている請求書や契約書なども注意深く確認して把握する事が重要です。
限定承認や相続放棄の検討
負債の調査を行った結果、被相続人が遺した負債がプラス財産よりも大きい場合、また、負債の総額が詳しく把握ができない場合には、限定承認や相続放棄を検討するとよいかもしれません。
相続財産のうち、プラスの資産と比較して負債額があまりにも多い場合は、相続放棄も検討しましょう。相続放棄をすると、相続人としての立場を放棄する事になりますので、負債も含めたすべての相続財産を無条件に放棄することができます。
また、負債額の把握が出来ない、どうしても相続をしたい財産がある場合に検討していただきたいのは限定承認です。限定承認した場合は、取得したプラス財産の範囲に限りマイナスの財産である負債も相続すれば良いことになりますので、プラス財産以上の負債に関しては放棄する事ができます。
負債の種類や範囲は様々であり、すべてを網羅して調査を行うには手間も時間もかかります。しかしながら、相続放棄や限定承認の申請には期限が設けられており、相続発生を認知した日から3ヶ月以内に手続きするというルールが設定されています。人が亡くなり手続きに追われている状態ではあっという間に感じされる事と思いますので、期限を意識して調査を行う事が大切です。